こんにちは、おんどりです
突然ですが、皆さんは病院に行ったことはありますか?
そこで皆さんが受けられた検査、治療は
それぞれの医者が経験から導き出したものではなく
診療ガイドラインに沿って提供されたものです
糖尿病や高血圧症などの生活習慣病から始まり
あらゆる癌に関して、それぞれの病気毎に
診療ガイドラインが作成されています
我々医師は、診療ガイドラインをよく読み
それに沿った検査、治療を日々行います
もし自分が癌になって、主治医が
経験や感覚だけを頼りに治療をしていたらと思うと怖いですよね
実はAGAに関しても診療ガイドラインが存在します
糖尿病や癌のように、AGA に関しても診療ガイドラインに
沿った治療が提供されるべきですが
実際はガイドラインを無視した治療を提供している
クリニックが多く存在します
AGAによる薄毛を治すためには
ガイドラインに沿った治療を受けることが最も効率が良いです
今日は現役医師であるおんどりが
AGAの診療ガイドラインをわかりやすく解説します。
これを読んで頂ければ
今後は無駄な治療にお金を払うことなく
本当に必要な治療だけを受けることができるようになります
なお、診療ガイドラインの正式名称は、
「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」
です
AGAとは
AGAとは男性型脱毛症のことで、男性ホルモンによって髪が薄くなる状態です
成人男性の3割がAGAによる脱毛症を発症しています
詳しくは下記の記事をご覧ください
診療ガイドラインとは
診療ガイドラインとは
健康に関する重要な課題について、医療利用者と提供者の意思決定を支援するために、システマティックレビューによりエビデンス総体を評価し、益と害のバランスを勘案して、最適と考えられる推奨を提示する文書。
Minds診療ガイドライン作成マニュアル編集委員会. Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver.3.0.公益財団法人日本医療機能評価機構EBM医療情報部.2021.3頁
と定義されています
非常にわかりにくいので簡単にまとめると
診療ガイドラインとは、
世界中の研究をもとに作った
病気ごとの最適な医療を提示した文書
です
つまり、AGAによる薄毛を治すには
診療ガイドラインに書いてある治療を行えば良いのです
推奨度とは
診療ガイドラインでは、世界中の研究データをもとに
それぞれの治療で期待できる効果を
推奨度という形で分類しています
推奨度は下記のA〜Dに分かれています
診療ガイドラインに記載されている意味だけではわかりづらいため
右側におんどり主観の解説も付け加えました
推奨度 | 意味 | 解説 |
A | 行うよう強く勧める | この治療をやればOK!! |
B | 行うよう勧める | Aがダメならこの治療を |
C1 | 行ってもよい | 効果はあまり期待できないけど害もないからやってもいいよ |
C2 | 行わないほうがよい | 効果は期待できないからやらない方がいいよ |
D | 行うべきでない | 有害だから絶対にやらないで!! |
こんなイメージで理解してください
まずはAの治療を行い、それでダメならBを行う
間違ってもDの治療をやってはいけません
推奨度別治療まとめ
推奨度別に治療を分類し、概要を解説していきます
まず全ての治療の推奨度別のまとめです
お急ぎの方は絶対にやるべき推奨度Aと
絶対にやってはいけない推奨度Dの治療のみ見ていただければOKです
治療法 | 推奨度 |
フィナステリド(プロペシア)内服 | A |
デュタステリド(ザガーロ)内服 | A |
ミノキシジル外用 | A |
ミノキシジル内服 | D |
自毛植毛術 | B |
人工植毛術 | D |
LED、低出力レーザー照射 | B |
アデノシン外用 | B |
カルプロニウム塩化物外用 | C1 |
t-フラバノン外用 | C1 |
サイトプリン、ペンタデカン外用 | C1 |
ケトコナゾール外用 | C1 |
かつら | C1 |
ビマノプロスト、ラタノプロスト外用 | C2 |
成長因子導入、細胞移植療法 | C2 |
続いて、以下で推奨度別に治療の概要を解説していきます
推奨度A
まずは推奨度Aの治療です
推奨度Aの治療は3つです
順に解説していきます
フィナステリド(プロペシア)内服
フィナステリドはAGAの原因となる
ジヒドロテストステロンの生成を阻害する薬です
フィナステリドの期待される効果、特徴は以下の通りです
- 1年間の服用で58%の薄毛が改善
- 2年間で68%、3年間で78%と長期間飲むと効果が高い
- 99.4%の確率で薄毛の進行を止める
- 40歳未満・薄毛の進行度合いが低い方で高い治療効果
- 効果を得るには6ヶ月以上の服用が必要
- 服用を中止すると元通りになる
ほとんどの方で効果が期待できますが、
治療開始時に若く、薄毛があまり進行していない方で
より高い治療効果が期待できます
AGAに気づいたらすぐに治療を始めることが重要です
デュタステリド(ザガーロ)内服
デュタステリドもフィナステリドと同様
ジヒドロテストステロンの生成を阻害する薬です
そのためどちら一方服用すればOKです
ジヒドロテストステロンはテストステロンから生成されます
テストステロンがジヒドロテストステロンに変換するのに必要なのが
5アルファ還元酵素です
5アルファ還元酵素にはⅠ型とⅡ型が存在します
Ⅱ型のみを阻害→フィナステリド
Ⅰ型、Ⅱ型を阻害→デュタステリド
Ⅰ型、Ⅱ型どちらも阻害するデュタステリドの方が
治療効果が高いと宣伝するAGAクリニックが多いですが
AGAと関連するのはⅡ型だけとされており
デュタステリドの方がフィナステリドより治療効果が高いとする根拠はありません
そのためまずは一般的に値段の安いフィナステリドを内服してください
ミノキシジル外用
ミノキシジルは、もともと血圧を下げる降圧薬として
開発された薬です
使用していく中で、副作用として全身の毛が増えることから
育毛薬としてミノキシジル外用薬が新たに開発されました
毛髪の成長を促進する作用により、薄毛を改善します
ミノキシジル外用薬は髪が薄い部分に直接塗布して使用します
○%ミノキシジル
ミノキシジル外用薬には必ず○%ミノキシジルと記載されています
○%とはミノキシジルの濃度を意味します
診療ガイドラインでは5%ミノキシジルを推奨しており
5%ミノキシジルの商品を使用しておけば間違いないです
5%ミノキシジルという商品も多く存在しますが
他の成分は関係ないので
○○成分配合とかは無視して値段が最も安いものを選びましょう
後で解説しますが、ミノキシジル内服薬は推奨度Dのため
絶対に使用しないでください
推奨度B
推奨度Bの治療は3つあります
下記に当てはまる方は試す価値のある治療です
推奨度Aの治療を半年以上継続するも
- 効果が得られない
- 効果があるものの不十分
順に紹介していきます
自毛植毛術
自毛植毛術とは、AGAで脱毛しない後頭部などの自分の髪の毛を
前頭部や頭頂部の薄い部分に植え替える治療です
82.5%という確率で植え替えた髪の毛が生えると言われています
薄い部分をカバーすることはできますが
薄毛の進行を止めることはできません
また、最低でも数十万円〜と費用も高額です
下記に当てはまる方は挑戦しても良いと思います
- 推奨度Aの治療を行っても薄毛が改善しない
- お金に余裕がある
- 手術に抵抗がない
下記で説明しますが、人工植毛術は推奨度Dですので絶対にやってはいけません
LED、低出力レーザー照射
LEDや、低出力のレーザーを頭皮に直接照射する治療です
低出力のレーザーを頭皮に当て、発毛を促進します
なぜ発毛するのかは確証に至っていませんが
発毛作用は証明されています
最適なレーザーの波長、出力、頻度などは確定していません
そのためどのレーザーが最も良いかはわかっていません
下記の方に当てはまる方にはおすすめできます
- 推奨度Aの治療がアレルギーなどで継続できない
- 推奨度Aの治療効果が不十分で、お金に余裕がある
アデノシン外用
アデノシンは頭皮に塗ることで薄毛を改善させます
推奨度Aのミノキシジル外用と同等の効果をもつ可能性があるとされていますが
ミノキシジルより発毛効果が高いとは証明されていません
下記の方にはおすすめできます
- 何らかの理由でミノキシジル外用薬が使用できない方
- 推奨度Aの効果が不十分で、お金に余裕がある方
推奨度C1
推奨度C1の治療とは
効果はあまり期待できないけど、害もないからやりたければどうぞ
という意味です
カツラは少し意味合いが違いますが
その他の推奨度C1の治療をやる必要はありません
カツラ
AGAは脱毛症で、毛が薄くなってしまう状態です
カツラは薄毛をおおい隠す方法なので
医学的にはAGAの治療にはなりません(自毛は増えない)
そのため推奨度C1になっていますが
生活の質が改善されることは証明されており
他の推奨度C1の治療とは異なって
満足度という意味で非常に高い治療になる可能性があります
カツラというと抵抗があると思いますが、
スヴェンソン、アートネイチャー、アデランスで行われている
増毛と呼ばれる着脱不要で、バレないカツラもあり
有力な選択肢になります
下記の方にはおすすめです
- 推奨度Aの治療で満足いく状態にならない
- 2万円/月程度のお金の余裕がある
カツラ、増毛に関してはまた別の記事で紹介させていただきます
その他
カツラ以外の推奨度C1の治療には
カルプロニウム塩化物、t-フラバノン、サイトプリン、ペンタデカン、ケトコナゾール
があり、いずれも外用の治療です
効果はあまり期待できないためわざわざお金を払って行う必要はないです
上記治療にお金を払うぐらいなら、上質なカツラやウィッグのために
お金を貯めた方が良いです
推奨度C2
推奨度C2の治療は2つありますが、現時点では治療効果が証明されていません
そのためやる必要はないので注意してください
ビマトプロスト、ラタノプロスト外用
いずれも緑内障という眼の病気に対する目薬ですが
まつ毛を伸ばす効果があり、美容の分野で使われています
まつ毛が伸びるなら頭髪も伸びるのではということで
AGAに対しても使用されることがありますが、効果は期待できません
そのためわざわざこの治療を選択する必要はありません
成長因子導入、細胞移植療法
毛髪の成長を促進する作用を持つ細胞や成分を
直接薄くなっている部位に注入する治療です
何だかとても効果がありそうに見えますね
今後多くの研究結果がなされて、良い治療であると証明されるかもしれませんが
今はまだ研究段階で、効果も副作用も全くわかっていません
要するに
何の効果もないにもかかわらず、副作用で何が起こるかわからない
ということです
しかも高額な費用を請求するクリニックが多いというのが現状です
よくわかっていない治療にお金の費やすなら
自毛植毛や高品質なカツラにお金をかけるべきです
推奨度D
推奨度Dの治療は2つあります
どちらの治療も
有害だから絶対に手を出さないで!!
と強くお伝えしたいです
ミノキシジル内服(ミノタブ)
AGA治療を始めている方は、ミノキシジル内服をしている方が多いと思います
ミノキシジル内服はAGAクリニックでまず提案される治療の1つです
おんどり自身も、初めてAGAクリニックを受診した際
デュタステリドと一緒にミノキシジル内服薬をお勧めされたのに驚きました
確かにミノキシジル内服は全身の毛が増える副作用があるため
薄毛が改善することもあるのかもしれません
しかし問題は、それ以外の心臓や血圧に関わる副作用です
ミノキシジル内服はアメリカでは高血圧症の薬として使用されているものの、
日本の厚生労働省にあたる、アメリカのFDAが
ミノキシジル内服薬は非常に副作用が強いため
- 他の薬を最大量使っても血圧がコントロールできない場合
- 必ず他の薬と併用して使いなさい
と言っています
AGAの薬としては、世界中どこの国でも承認されておらず
そもそも日本では高血圧に対する薬としても使用できません
ミノキシジル内服は
様々な薬を使っても高血圧が治らない方に対して、
危険な副作用があるが仕方がなく使う薬
というイメージです
そういう薬を薄毛治療に使うということはどんなリスクがあるか
想像できますでしょうか?
人工植毛術
人工植毛術は、自毛植毛術が自分の毛を植え付けるのに対し
人工的に作られた毛を薄い部分に植え付ける方法です
自分の組織とは異質なものを頭皮に植え付けるため
体が拒絶するため高確率で人工毛は脱落します
また、その過程で頭皮が炎症を起こすなど
様々な副作用があるため絶対にやってはいけない治療です
自毛植毛と人工植毛、似て非なるものですので
くれぐれも間違えないようにしてください
少しでも多くの方が、正しい治療を選択して
最小限のお金で薄毛の悩みを解決する助けになれれば幸いです